『電車が走るケーキ屋さん』
このキャッチーで誰もが一発で覚えられるコンセプトをオーナーさんから最初に聞いた時、どこにも無いお店をデザインできるかもしれないワクワク感がありました。
それと同時に、冷静になっている自分の感情として、『このコンセプトはデザイン次第で失敗もある諸刃だな』と感じました。
皆さんはケーキ屋さんに電車を走らせると聞いて、どんな店舗を想像するでしょうか。
たいていの方は、プラレールが走るおもちゃ屋さんだったり、もしくは遊園地的なイメージを想像するみたいです。
果たして、フランスでしっかり修行してきたオーナーさんの本格的なパティスリーのイメージに、普通に想像されるような「どちらかというと幼稚」なイメージだと成立しません。
強烈なコンセプトには、デザインの落としどころを間違うと商売として成り立たなくなる。
きちんとした世界観づくりをしないと『コンセプト負けしてしまう』
そう感じたのを覚えています。
<電車が走るケーキ屋から膨らませた世界観>
オーナーさんの頭にある世界観の中で電車とは『フランスのメトロ』から想起している部分があります。
幼稚っぽくならず、フランスで修行してきたオーナーらしさを出せないだろうか。
その答えの一つが、店内に象徴的なメトロをイメージさせるトンネルを作ることでした。
実際に提案したイメージスケッチ
<素材にこだわった店舗の表現>
トンネルを作ると言っても、様々な表現方法が考えられます。
本物のトンネルと同じに作っても、何の意味もありません。
お店の規模や高さ、そのバランスを考えながら形を設計し、国内で販売しているメトロタイルを様々なメーカーからたくさん取り寄せました。
そして、現地での見え方も考慮した上で、ベストなものをセレクトしていきました。
<実現するために必要だった職人さんの力>
おそらく住宅のタイルを貼る左官職人さんに「天井まで伸びる曲面に貼って欲しい」という依頼はなかなか無いでしょう。
今回のイメージを表現するために、左官職人さんには細かいワガママまでたくさん実現していただきました。
タイル貼りの様子
特にこの曲面は大変そうでした。
キレイに割付されたメトロタイル
こうして、たくさんの周りの力も借りて、素敵なコンセプト『電車の走るケーキ屋』を表現した、オンリーワンの世界観を実現させることが出来ました。